FlatfishGardenの泡 2nd

KOSHU178の日記

「トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男」

http://clefclef.com/koukaiyotei/tomdowd.html
(2006年4月より UPLINK X にてロードショー)
の試写会に行って来た。
レコーディング・エンジニア/プロデューサーTOM DOWD(1925-2002年)。
なんとなく名前は知ってても、こんなにもすごい人だとは知らなかった。
以下、若干の「ネタバレ」的な内容も含むのでご了承を。
日本でのサブタイトルは「いとしのレイラをミックスした男」だけどそれだけじゃない。
(原題は"TOM DOWD&THE LANGUAGE OF MUSIC")
パンフを参照しつつ彼がレコーディングもしくはプロデュースした作品を抜粋列挙すると


1950年代〜’70年代
ボビー・ダーリン「マック・ザナイフ」
ドリフターズ withベン・キング「ラストダンスは私に」
コルトレーンジャイアント・ステップス」「マイ・フェバリット・シングス」
セロニアス・モンクオーネット・コールマンチャールズ・ミンガス
エリック・ドルフィー、レイチャールズ、アレサ・フランクリン
(この辺のアーティストに関して具体的な曲名等はパンフには載っていなかったが、
レコーディング&ミキシングエンジニアとして参加したのだろう。)
ブッカー・T& the MG'S、オーティス・レディング「オーティス・ブルー」
ウィルソン・ピケットムスタング・サリー」
クリーム「カラフル・クリーム」「クリームの素晴らしき世界」
オールマン・ブラザーズ・バンド「アイドルワイルド・サウス」「フィルモア・イースト
エリックク・ラプトン「461オーシャン・ブールヴァード」
ロッド・スチュアート「アトランティック・クロッシング」「明日へのキックオフ」
レーナード・スキナード「ワンモアフォア/フロム・ザ・ロード
’80年代以降にもケニー・ロギンス、シカゴ、リタ・クーリッジ、ダイアナ・ロス
ニューモデル・アーミー、クラプトン「マネー・アンド・シガレッツ」「オーガスト
復活したオールマン・ブラザーズ・バンド
プライマル・スクリーム、など、数は減っても75歳くらいまでこの仕事をやり続けた。
ふう。。ただ書き写すだけでお腹がいっぱい。
劇場公開が近づけば、より正確で精緻な作品リストが様々なHPで紹介されるだろう。
<追記2を御参照下され>


映画はトム・ダウド自身が語るレコーディング現場の回想を中心に
かかわってきた有名アーティスト達の彼に対するコメントや、
当時のライブ/録音映像などで構成されている。
レーナード・スキナードのバックステージやアレサ・フランクリンの録音風景など、
非常に生々しくて新鮮だった。
50年代や60年代のレコーディング風景には演出された「再現フィルム」も若干あるようだが
それも当時の録音現場の雰囲気が解る非常に貴重な映像。



トム・ダウドは16歳で高校を卒業。
コロンビア大学に入ってからは、チューバ奏者orベーシストor指揮者として(プロの)バンドでも活躍したが、その後10代のうちに原子物理学を研究して原爆の開発にかかわっている。(ビキニ諸島の実験にも立ち会っている。)
大学の夏休みのバイトで入り込んだのがレコーディング・スタジオ。
1949年に初めて彼が録音したアイリーン・バートンやスティック・マギーのレコードが大ヒットしてしまう。
1949年・・・彼はまだ24歳である。つまり最初から「いわゆる神童」だった。


パンフレットを水で薄めた紹介はこのくらいにしておきます。
印象的だった場面や言葉は、、、、ありすぎて私の記憶力ではオーバーロード


音楽的にも知識と技術が長けていた彼の、アーティスト達へのアドバイスはその曲に深みと強さを与えた。例えば「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」は、煮詰っていたクリームのメンバーに「アメリカ・インディアンのリズムをドラムでやってみたら?」というトムの提案によって全く別の次元に飛翔した。スムーズもしくは斬新なサウンドへ楽曲を変化させるコード付けなどもかなりやったようだ。
この辺は、ジョージ・マーティン的。
しかし、列挙された多種多様な作品を見れば解るように「彼自身の個性」を押し付ける事は全くない。ひたすらアーティスト達の持ち味を120%発揮させた作品を作っているのだ。
この辺は、フィル”ウォール・オブ・サウンズ”・スペクターと正反対。


トムにプロデュースされたアーティスト達はそろって、
「彼にまかせると安心して創作ができた。
彼の録音と楽器バランスはいつだって完璧だし、不安だったり煮詰っている時のアドバイスは的確で、自分たちだけではとても生み出せなかったものを引き出してくれた。」
などと語っている。
戦後ポピュラー音楽の助産婦としても天才的だったのだ。


映画としては本人登場のドキュメンタリーゆえか、ネガティブな場面はほとんどない。
「苦労した」「窮地に追い込まれた」気配も全く感じられない。
伝記物にありがちなカタルシスはなく、全てがパーフェクト。
凡人としては自分のダメさを考えさせられて落ち込むんだけど、
途中からはそんなことはどうでもよくなって助かった。


「レイラ」のマルチテープを回しながら、
「ここでエリックとデュアンがユニゾン、そして自然にハモってゆく。ほら。
楽譜なんてないんだよ。全ては即興なんだ。
(他のフェーダーは下がっているので、エフェクトも何もなしの「素の」ギターデュオになっている。)
この辺から、、、(と別のフェーダーを上げる)おっ。ベースを発見♪
こりゃすごい。せっかくだから最後までミックスやりたいな。」
と、ニコニコしながらフェーダー操作するトム・ダウドは本当に少年のようだ。
(このシーンは1997年に撮影されたそうだから72歳。)


4月1日から 渋谷のUPLINK Xでロードショー。
非常に面白いのは
一般入場料1500円のところ、
自宅に録音機材を持っている人は、携帯などで撮った写真かマニュアルを受付で見せると
宅録割引」(爆笑!)で1200円になるそうだ。
宅録おたくの方々は行くしかないでしょう。
昨日の日記の写真でも保存しておいて、できればまた観に行きたいと思っている。


そうそう、
試写会場から駅までの帰り道、
ふと見上げた雑居ビルの看板の1つが「LAYLA」だった。
ホントだよ。


<追記>
その「LAYLA」を検索したらキャバクラらしい。
http://www.yorumachi.jp/windows/ginza/LAYLA/i/2.htm
蛇足この上なし、、、


<追記2>
ディスコグラフィーありました。
http://www.thelanguageofmusic.com/discography.htm
日を改めてゆっくり見るつもりです。