FlatfishGardenの泡 2nd

KOSHU178の日記

脳とコンピュータが直結しはじめた

http://matsuda.c.u-tokyo.ac.jp/sci/project/nhksp/
上記の場所でNHKスペシャル「サイボーグ技術が人類を変える」に関係するページへのリンクを解説付きで公開している。放送はちょっと前だったが、なかなか興味深い内容なのでメモとして日記に書いておこう。


この数年「脳」に関する研究が飛躍的に進歩して、その成果の一部が難病治療や最新の義手/義足に実用化されいているという。基本的には人が意思を持った際に脳が発する電気パルスを解析したり、逆に耳や目に刺激を受けた時に発するはずの電気パルスを脳内に直接送ったりという技術を用いるそうだ。
「脳」そのものについてはまだまだ解らない事だらけなのだが、解っている事実を元に色々試してみると、意外と単純な(とは言ってももちろん複雑な最先端技術)仕組みでかなりの効果があるらしい。
最初にあげたサイトからのリンクをいくつか見てみたが、多くは専門的すぎて読んでも解らない。(笑)
番組の再放送もあるようなので、興味ある方は是非テレビで見て下され。


ロボットスーツ
http://sanlab.kz.tsukuba.ac.jp/HAL/index.html
まずはこれ。「脳に直結」ではないが、見た目がマンガっぽいので。
自分の筋肉の動きを補助する機械。
高齢化社会で老人同士が介護する場合などに、相手を軽々と持ち上げてあげられる。
マジンガーZ」「ガンダム」の現実化は目前だ。


「自分の意志で動かせる義手」
事故で腕を切断してしまった患者さんが、実際に使い始めている。
上腕に取り付けられた電極のパルスを解析して、ロボットハンドの各指の動きを制御する。最初はコントロールが難しいが、訓練を重ねるうちに思い通りに動かす事ができるようになる。また、ロボットハンドにもセンサーをつけて、物をつかんだ時の圧力や感触をフィードバックする。指先をつねると「指先が痛い」と感じる事ができる。番組中立花氏も、義肢をつつかれて「手が痛い!」と言っていた。


上腕ではなくて、直接脳から信号を取り出すものも実用化されつつある。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20050118301.html

これは脳内に複数の電極(この場合は100個)の付いたチップを埋め込み、それを皮膚に装着したコネクタを通じて取り出す。
(イメージイラスト)
http://www.wired.com/news/images/0,2334,66259-16951,00.html
番組で実際に使用している人の映像も登場するが、頭皮から突き出ている端子にプラグインする姿はまさに「マトリックス」のようだ。


この「脳直結の義肢」の応用範囲は広い。
義肢を着けなくてもコンピュータのポインタ等を「考えただけ」で動かせるようになる。実際に両腕が動かない方が、コンピュータを自在に操れるようになって来ている。先ほどのリンクの中でその様子が動画でも紹介されている。
http://a1112.g.akamai.net/7/1112/492/03312000/www.wired.com/news/audio/wmp/high/CyberkineticsDemo.wmv



マウスの実験では、前足でレバーを押すと水が出る装置で学習させ、その時の脳波のパターンで水を出すようにしたところ、マウスもそのうちに前足を動かさずに『水を飲みたい』と「考える」だけで水を出せるようになった。(説明が下手ですね。解ります?)
これは要するに、、、、「念力」なんだけど。
奥様は魔女」「魔法使いサリー」?


「人工内耳」
先天性の難聴や後天的に聴力を失ってしまった人に使用する。
内耳にあるカタツムリみたいな所(蝸牛)に8〜22個ほどの電極が付いたものを差し込み、音を感知する外部装置から送られた電気パルスを直接発生させる。
http://www.bionicear.jp/clarion/01.html
頭皮の内側にある端子と外部装置のコネクターは磁石によって着脱できる。(映像を見るとちょっとびっくりする。)日本でも数多くの人達が実際に使い始めている。
最初はその電極刺激がノイズとしか認識されないが、時が経つにつれて「言葉」として認識されるようになり(脳が『これは意味のある音だ』と学習する)、それに伴って言葉の発声も正確になり、難聴という事を意識せずに生活できるようになるそうだ。番組では人工内耳をつけた子供がバイオリンの稽古をしていた。そのピッチの正確さにびっくり。
SF的に考えてみると、この外部装置の設定や設置場所次第で、100メートル先の話し声も、地球の裏側でのコンサートも自分の「頭の中」で鳴り響く。コウモリとか犬の超音波の鳴き声だって可聴領域に変換すれば聴こえるってこと。
サイボーグ009」で超人的な耳を持っている奴いなかったっけ?


「人工網膜」
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20030722301.html
これはビデオカメラの映像を自分の「脳」で見る技術。
視覚障害者には一日も早く実用化して欲しい技術だろう。
SF的に考えれば、赤外線カメラや超望遠レンズを取り付けて「夜目遠目」を超人的なレベルで持つ事も可能になる。「ターミネーター」の目だ。


「脳ペースメーカー」
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20010829305.html
パーキンソン病鬱病、OCD、耳鳴り、中枢性疼痛――これらはみな同じ病気だ。異なるのは脳の部位であって、メカニズムではない」とこのページには書いてある。
脳内の特定の場所に電極を埋め込み、パルスを送り込む事で様々な疾病を抑制できるそうで、これはすでに実用化している。番組ではパーキンソン病の人の震えがぴたりと治まり、重度の鬱病の人が「とても気分が良い。」と社会に適応できるようになっていた。
廉価になって早く普及して欲しいと切実に考えている方も多いだろう。一方では「時計仕掛けのオレンジ」的な危惧もあるが、、。


「ロボマウス」
http://news.nationalgeographic.com/news/2002/05/0501_020501_roborats.html
(上記のリンクは2002年のもの。英文なので私は読んでいませんが。)
これはちょっとショッキング。
まずラットの脳に電極を入れ、「右に曲がる」「左に曲がる」などの行動をした時のパルス・パターンを解析する。その後、そのパターンを直接脳に送り込む。そして指示通りの行動をした時に「快楽中枢」を刺激してあげる。これを繰り返すと、、、。
生きたラットをリモコン操作できるのだ。
番組でも実際に「右」「左」などとボタンを押すと、ラットはその通りに行動して、複雑な迷路を迷う事無く脱出してしまった。本来ラットが嫌いな高所へのハシゴも、とまどいながらも結局登ってしまう。
例えば、このラットにカメラを積んでおけば、災害時にがれきの下の生存者を捜すなどの「生きているロボット」として使えるのだそうだ。もちろん軍事利用を考えた膨大な研究費が投入されている。


「人工海馬」
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20041026301.html
これまたびっくり。
海馬は短期記憶と情報整理をつかさどる非常に大事な場所。新たな情報を記憶したり、過去の蓄積された記憶が混乱せずに思い出せるのもこの海馬のおかげ。

海馬/脳は疲れない ほぼ日ブックス
(この本に詳しく書いてあるが、脳細胞は加齢とともにどんどん「死んで」行くのに、ここだけは年をとっても細胞が増える場所。刺激を与え続けると、過去の記憶との経路が複雑に深化して機能アップし続けるというのも中年には嬉しい事実。)


ラットの海馬を数多くの薄いスライスにする。
そのスライスそれぞれに様々な電気パルスを与え、どう変換されるかを記録。
それぞれの変換パターン(変換式)を記憶させたICチップを制作。
そのICチップをさらに集積させて「人工海馬」を作り上げる。
この「人工海馬」、将来的には本物の海馬の役割をかなりの部分果たしてしまうかも知れない。
詳しくは先にあげたリンクのページを是非読んで欲しい。


こんな記事を読むと妄想は広がってゆく。この試みが成功すると、同様の手法で脳の様々な部分を人工的に作れるかも知れない。記憶や思考パターンを抽出したりコントロールできるとなると、映画「トータル・リコール」のシュワルツネッガーや「冬のソナタ」のヨン様のように記憶の置き換えだって、あながち単なる空想ではなくなってくる。アンドロイドに「人」の記憶をインプットしておけば、「ブレードランナー」や「A.I.」のような悲劇もおきてくるだろう。夢と現実は脳内では差がない事を考えると、ヴェンダースの映画「夢の涯てまでも」のように夢をディスプレイに投影できるかも知れない。


この番組では取り上げられなかったが、「人工臓器」「人工皮膚」も実際に実用化されつつある。自分の細胞の一部(萌芽細胞)から培養した細胞で自分自身の皮膚や内蔵を作れるようになるらしい。プラスティックなどの人工臓器と違って拒絶反応が起きない。未来の美容整形は、自分の細胞から育てた若々しい皮膚による「10代のお肌」が主流になるに違いない。


ここまでくると、「肉体」にはほとんど意味がなくなってくる。
エジプトのファラオやマイケル・ジャクソンが追い求めた(?)「不滅の肉体」が、ある程度実現しそうな雰囲気だ。(ファラオやマイケルのような超リッチな人限定だろうが。)


肉体はなく、脳髄のみが生きている。
しかも、その脳髄までもが人工脳髄だとすれば「人」はどこにいるのだろう。


・・・以前の日記に書いた「現地録音CD」なんて素朴で可愛いものである。