FlatfishGardenの泡 2nd

KOSHU178の日記

マクラフリンとiPod

自分の掲示板に
プログレの急な失速は何だったんだろう」
という書き込みをいただいたので、熱心なプログレファンとは言えない自分も考えてみた。


中学〜高校生の自分にとってプログレは聴いた事のない新鮮な音世界を教えてくれる音楽だった。クリムゾンのジャズ風味、オーケストラや自然音(効果音)をロックバンドの楽器にしたピンクフロイドインド音楽風味のマハビシュヌ・オーケストラ、、。
ポップスやハードロックに比べてよく理解できない部分も多かったけど、背伸びしたい年頃でもあったのでカセットテープを何度も聴き続けた。特にピンクフロイドの音響はヘッドフォン大音量で。
その後(70年代後半)「プログレ」というジャンルに置かれてるバンドをいくつか聴いたけど、メジャーなバンドに比べて印象は薄かった。たまたま聴いたものがそうだったのかも知れないが、なんだか安っぽいクラシックか、あまり上手ではないジャズに聴こえてしまったのだ。そして自分の興味はうすれてしまった。


それから20数年後の今「プログレの失速」というフレーズから頭に浮かんだのは、マクラフリンが1995年に発表したアルバム「ザ・プロミス」だった。

ザ・プロミス

ザ・プロミス

このアルバムのゲストは凄い。
ジェフベック、パコデルシア、ディメオラ、マイケルブレッカー、デニチェン、スティング、デビッドサンボーン、ザキールフセイン、、、
この全員で合奏したという訳ではなくて曲ごとにメンバーが違う。
パコとディメオラが参加しているのはアコギによるトリオ(スパニッシュ)
キールフセインらが参加しているのはシャクティインド音楽
ブレッカーらが参加しているのは当然ジャズ。
ジェフベックは、、、ジェフベック音楽だけど。(笑)


これらの楽曲を聴いて感じるのは、マクラフリンの楽曲や演奏が、ジャズはよりジャズらしく、民族音楽はより民族音楽らしくなっている事。原点回帰なのかも知れないが、彼に蓄積された技術や知識が無理なくそれぞれの方向で進化しているように思われる。プログレは様々なジャンルの音楽を貪欲に吸収合併して出来たロックだが、それを再びそれぞれの要素に解体したような印象だ。
(「スーパーギタートリオ・メンバー」の曲はちょっとジャズっぽ過ぎるけど)


それにしても、マクラフリンという基軸があるから全体の統一感はあるものの、ジャンルを眺めるとなんたる無節操なアルバムだろう。マクラフリンのこれまでの活動歴の見本市のような内容だ。


まるでiPodで「マクラフリン」をピックアップしてランダム選曲させたような。
・・・ああ、やっとiPodが登場した。ほっ。


プログレの長尺大曲指向は80年代以降の僕らの気分にはあまりにかったるかった。
ひとつのアイディアやコンセプトを延々1時間聴く気持ちの余裕がなかった。
10分くらい聴いたら「あ〜、解った、解った。」という気分になっちゃう。
簡単に言ってしまえば飽きちゃう。


技術向上に長期間かけて初めて演奏し得るクラシックやジャズや民族音楽ならともかく、ロックの人がそれらをちょっとつまみ食いした「それ風」の音楽は、その原点の音楽を体験済みのリスナーには退屈に感じるのは仕方ないだろう。


マクラフリンのその後はフォローしていないが、インド系の「シャクティー」の活動がメインなのかな?つい最近も来日公演があったようだけど、数年前の「シャクティー松戸公演(!)」も素晴らしい演奏だった。


ところで手元にある「ザ・ビリーバー」という2000年に発売されたアルバムの曲の長さは全て1曲10分以上だ。(18分、14分、・・・)

ザ・ビリーヴァー

ザ・ビリーヴァー

おいおい、今まで書いてきた事と全く逆じゃん!
その通りです。申し訳ない。(笑)


しかし、もはやこの音楽を「プログレ」と呼ぶ人はいないだろう。
インド音楽のバリエイションもしくは発展型」という感じ。
おそらくマクラフリンはこのシャクティーでの成果をもとに「新たなプレイリストとしてのアルバム」を作るのではないかと僕は思っている。
そして、このやり方が「マクラフリンのプログレ」だと(僕は)勝手に考えてる。
そういう意味では「ロバート・フィリップのプログレ」も現在進行形だと思う。


いきなり話が飛ぶが、最近は「気に入った曲の気に入った部分(サビとか)だけ」を抜き出してランダム再生している若者も多いらしい。今や「1曲を通して聴くのもかったるい」世代の登場である。そいつをiPod Shuffleでやるのがナウいのだろう。平井堅のAメロに松健サンバのサビがつながり、ヘイ・ジュードのエンディングコーラスがちょっと聴こえて次には・・・。みたいな。


実はこれに関しては「ジョン・ゾーンiPod Shuffleだったのか」と感じてる。(笑)
例えば1989年に作られた「Naked City/ジョンゾーン」。

ネイキッド・シティ

ネイキッド・シティ

1曲の中に短いシークエンスで次々とジャンルの違う音楽が登場する。
サンプリングではなくて生演奏で。
そのアルバムや彼のプロジェクト「コブラ」に出会った時の衝撃も忘れられないのですがこの辺で。。。


ちなみにおいらは、iPodiPod Shuffleも持ってません。