FlatfishGardenの泡 2nd

KOSHU178の日記

新しい音楽はいらない?アーカイブの時代

情報漏洩で話題のファイル共有ソフトWinnyについての番組をweb上で見たら、
自分も薄々そう感じてた事が端的に発言されていた。


発言の主旨は、
you tubeiTunes Music Storeの未来は究極の図書館。
その時音楽はどうなるか。
聴きたい音楽はすでに過去にある。
古今東西の名曲名演奏は全てアクセス可能になり、
消費者は過去のアーカイブを彷徨うだけでも一生遊べる。
・・・新曲を作るのは酔狂な趣味人だけの時代が来るかも知れない。」


自分も含む周囲のポピュラー音楽趣味を持つ人達の傾向として
青春時代の懐かしい音楽を好むというのが普通にある。
ハードロックだったりフォークだったり歌謡曲だったり。
やっぱりキング・クリムゾンはすげぇ!とか。(笑)
さらに「最近この音楽が新鮮で楽しくて♪」
てのが1950年代のジャズだったり、1920年代のジャンゴだったり、
古いブルースだったり、昭和の歌謡曲だったりする。


それが同世代だけだったら「おやじの懐古趣味」のひと言で終わる。
しかし、20代の若者を含むほとんど全ての世代で
時代を超えて自分にピンと来る音楽を求める傾向があるようなのだ。
若者がロバート・ジョンソン松田聖子チャーリー・パーカー
普通に楽しんでいる事実。(まだ一部の若者かもだが)


かつてポピュラー音楽は、流行りが終われば「廃盤」となり
その後は有名どころだけ「懐かしの○○大全集」などの名前で
たま〜に再発されるのが普通。
そこから漏れた音楽を聴こうというマニアは
廃盤屋めぐりをしたり、重症患者は海外まで買い出しに行ったりと
とんでもなく時間とお金をかけて自分を満足させていた。


しかし例えばiTMSでは、出来立てほやほやの新曲と50年前の音源が
データとしては全く均質に並んでいて、何の苦労もなく自宅からアクセス可能。
リスナーがどれを選ぶかは自由。
「古くてもいいものはいい!」は音楽でも真実なので、
限られた時間とお小遣いで、別に新しいものばかりを追いかける必要も無い。


実際、たまに見る深夜の若者向け音楽番組に登場する曲は
洋楽邦楽共に80年代から何も変わってないように感じられる。
日本語ラップ」が随分と増えたなぁ、、、くらい。
最新のレコードから音楽体験としての新鮮さが微塵も感じられないというのは、
こりゃちょっとエラいことだ。


サウンド的には真空管などを駆使してレトロな質感を追求したり
スウィング・ジャズ等レトロなジャンルで味付けするのが
普通になって久しいけれど、
それだったら本物を聴いた方がずっとぐっと来るというもの。
そして、そう感じるのは「おじさん」だけではなさそうだ。


もちろん、新曲や若いアイドルや新しいクリエーターが消滅する事はあり得ない。
特に「歌詞」の部分では、その時代時代の精神状態や空気感を敏感に表現する
「時代の吟遊詩人」は絶対に必要とされる。
しかし、そのバックにどんな音が鳴っているかはそれほど重要視されていないと感じる。
過去のアーカイブから曲の主旨にあったサウンドを適当にサンプリングすれば一丁上がり。
日本語ラップ全盛の意味は、そういうことなのかも知れない。


また、特に若い人は友達との話のネタとして「流行りもの」も必要とするから、
流行りモノの供給者も消滅しない。
が、アーカイブの時代が本格化したら必要とされる(それで生活出来る)
供給者の数は現在よりもずっと減るだろう。


10年程前に売れっ子プロデューサーが
「将来は従来と同じ意味での『音楽家』という職業はほぼ消滅するだろう。
 その時、趣味のバンドをやるために今から練習しておくか。」
と発言しているのを読んだ事がある。色々と深読み出来る言葉だと思う。
そんな時代は意外と早く来るのかもしれない。


もちろん新作を作りライブをやる「酔狂な人」も消滅しない。
プロアマ関係なく。
音楽で何かを表現すること、またそれを聴いてくれる人がいることが
人生の喜びそのものと感じる人がいる限り。
そして、その表現に共感/感動する人がそこそこいれば、
そこそこの枚数のアルバム(ファイル?)が国境を越えて売れ
ライブ会場にそこそこの数のお客さんが集まり、心から満足する。
生身の人間が目の前で演奏する姿から受け取る何かは、
録音物から得られる感動ととは全く別物だし。


もしかしたら、それは音楽にとって健康な事なんじゃないかとも思う。
超巨大化したレコード産業界の皆さんには気の毒かも知れないけど。


蛇足だが、普通に暮らしている人が、
日常的にそこそこの回数ライブに足を運べる経済的状況であって欲しい。
酒場やレストランにも生演奏が普通に流れていて
「酔狂な人」も相当数生存出来る社会であって欲しい。
税金は、何10億、何100億円もする殺人の道具をどかすか輸入する為ではなく
そういう社会実現の為にに使って欲しいなあ。